『聖樹のパン』原作者山花先生

Q.
聖樹のパンが誕生した経緯を教えてください。
A.
漫画のテーマを色々と模索している時に、友人が運営している地域活動支援センターのカフェでパンを販売している婦人と知り合いになりました。
パンは漫画のテーマとして面白そうだなと思い、パンを題材にした漫画が他に見当たらなかったので、その頃私に声を掛けてくださっていたヤングガンガンの編 集者さんに「パンはいかがですか?」とメールすると「パン、いいですね! ぜひやってみましょう」と返事をくれたんです。
自身でもパン作りに挑戦してみると手際が悪く下手だったので、初めは下手なパン屋さんを主人公にして実験的に短期で掲載してみました。しかし、長期連載を目指すに当たって読者の皆さんの反応や、編集部の意見からプロフェッショナルなパン屋さんを主人公にする事に。そうして聖樹君の誕生となりました。
Q.
取材秘話があったら教えてください。
A.
プロフェッショナルなパン屋さんという事で、それをどう表現して良いのか、特にファーストインパクトを読者にどう印象付けるかで困っていました。 何気なく手元にあった日本酒を題材にした漫画をパラパラ読んでいたのですが、その第1話にヒロインが“利き酒”をする場面があって、これはプロフェッショナルだなと。これをパン職人にあてはめたときに、「小麦粉を舐めて品種を当てる」“利き粉”って出来ないのかな?と考えたんです。
小麦粉に関する知識も無く、ツテも無く、自分で調べるにも限界があって、ネットを調べていたら「コムギケーション倶楽部」のWEBサイトに突き当たったんです。
事務局の電話番号が載っていたので電話をし、その際に紹介していただいたのが、“コムギの伝道師”の異名をもつコムギケーション俱楽部の国産コムギアドバイザー・佐久間良博さん(『聖樹のパン』コミック第1巻の推薦帯にご出演)でした。
そこから佐久間さんがたくさんのパン屋さんや業者さんを紹介してくださったんです。お陰様で“利き粉”は形になり、そのインパクトで『聖樹のパン』は連載が決まりました。佐久間さんの後押しがあって、作品に協力してくださる方の人脈も見る見る広がりました。今回のハッピークッキングさんのイベントの企画も、講師として出演してくださるパン屋さんも全てこうしたご縁から繋がっています。
Q.
取材でご苦労されたことはありますか?
A.
実は私自身、取材しながらストーリーを作る経験が乏しく手探りで、取材されるパン屋さんたち雑誌の取材は受けるけど漫画家の取材は初めて。質問する側も、される側もお互い手探りでした。なのでパン屋さん皆様にはご迷惑をお掛けっぱなしです。
まずはパンを作ってみることから始めましたが、最初はパンが出来るメカニズムも解っていませんでしたので、手際も悪く散々でした。初心者のくせに教本を見ながらバゲットに挑戦しなければならない必要に迫られ、生地がベトベトで手に負えなくて本当に切なく泣きそうでした(笑)。
今は食パンくらいは普通に焼けるようになり、不思議とお料理も上手くなって来ました。これは予想外の収穫です。

コムギケーション俱楽部 北海道産小麦アドバイザー
佐久間良博のコメント

山花さんとの出会いは2年前、「利き粉って可能でしょうか?」という携帯電話の向こうからの質問が始まりでした。
いろいろなやり取りをしているうちに、ふと30年以上昔に出会ったパリ帰りのパティシエが初めて北海道産和麦を手にした時の言葉を思い出しました。
「小麦粉の袋を開けた瞬間の香り、口に含んだ時の旨みと舌ざわり。
理想の小麦粉に出会えた。」
この体験は長年小麦と共にしていた私にとっても本当に新鮮な驚きでした。そうか、この体験を山花さんにもしてもらおう。
「どうでしょう、実際に利き粉が出来るパン職人さんに会って直接お話しされてみては?」
そこでの出会いが第一話の採用試験の場面につながります。主人公の聖樹君からプロフェッショナルなパン職人の言葉として見事に活かされておりました。

その後、山花さんには北海道にも来ていただき和麦を愛するパン職人の方々の持つ思いや技術研鑽のお話、生産農家の方々からも和麦生産にかける情熱や苦労話などを取材していただきました。その時の体験や感動が正樹君を通じて読者の方々にもしっかりと届いているのではと考えております。『聖樹のパン』の読者の中にはパン関係、農業関係の方が多数おられます。私のところにも「ものすごくマニアックで専門書よりもわかりやすくて専門的……」と嬉しい感想も多々寄せられております。 気になる美味しそうなパンレシピも沢山紹介されております。読み込んでいくうちに、“このパン食べたい欲求不満感”が発生してきます。

ヴァーチャルからリアリティーへ、実際に作って食べてみよう!と実現させてくれたのがこの「聖樹のパンリレーレッスン」です。
夢がかないました。 聖樹君には、和麦アンバサダーとして小麦とパンの奥深い魅力を末永く伝えていただきたいと願っております。
『聖樹のパン』が大ロングセラーになりますように。